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白髪染めと頭皮ケアの両立、フットバスの意味
白髪染めをしながら頭皮のことも大切にしたい方に向けて、うちの店でフットバスを取り入れている理由と、施術の時間をどう過ごしていただいているかを、日々の会話をなぞりながら書いた読み物です。
フットバスを取り入れている理由
白髪染めのご予約をいただくとき、「染めたいけれど、頭皮のヒリつきが気になるんです」というお声を、ここ数年でずいぶん多く伺うようになりました。染めるのをやめるつもりはないけれど、地肌のことも大事にしたい。その両方をどう成り立たせるかが、40 代を過ぎた頃からいちばん悩ましいところなのだろうと感じています。
うちの店でフットバスをはじめたのは、頭皮への薬剤の刺激を減らしたい、というだけの理由ではありません。染めているあいだの体そのものを、少しでもゆるめてあげたいと思ったからです。座って上を向いている時間が長いカラーの施術では、肩や首まわりに知らないうちに力が入ります。そこを、足元からあたためることでほどいていけるように感じています。
椅子の下に置いた深めの木の桶に、あたたかいお湯と少しのハーブを入れて、施術の途中で足を浸していただきます。「こんなの初めてです」と最初は少し驚かれますが、10 分ほど経つ頃には、鏡ごしに肩の位置が下がっているのがわかります。染めるための時間が、体をほどく時間にも変わっていく。そのつくり方をずっと大事にしています。
頭皮の血流とリラックス
頭皮の状態と、体全体の巡りは、思っているよりつながっているのだと日々感じます。冷えを感じている日にご来店されたお客様は、頭皮を触らせていただくと表面が硬く、色ムラも出やすい傾向があります。逆に、湯上がりのようにゆるんでいる日は、薬剤ののりも穏やかで、仕上がりの艶の出方もちがってきます。
足元をあたためると、体の下のほうに滞っていた血が動きはじめて、頭のほうまで巡りやすくなるように感じます。医学的な断定はできませんが、施術中のお客様の呼吸が深くなっていく様子や、頬の色がふっと明るくなる瞬間を見ていると、体はちゃんと反応してくれているのだなと思います。
頭皮そのもののケアは、シャンプーの選び方や乾かし方も含めて日々の積み重ねが大きい部分です。ただ、月に一度、店で染めるときの数時間だけでも、頭皮に強い緊張がかかっていない状態をつくれると、その回のカラーの負担がずいぶん違ってくるように思います。「染めた翌日の頭皮のつっぱり感が減った気がします」と伺うことがあるのは、薬剤の話だけでなく、こういう時間の過ごし方も関係しているのかもしれません。
ヒリつきや赤みが続いているときは、無理に染め続けずに、皮膚科でのご相談も選んでいただいていいと思います。うちの店で伺うお話も、そこと組み合わせていく前提でお伝えしています。
施術中の時間の使い方
香草カラーやヘナは、置き時間が普通のカラーより少し長めになります。その時間をどう過ごしていただくかを、わたしはずっと考えてきました。雑誌をお渡しして黙ってお待ちいただく形もあります。でも、せっかく体をほどく余白があるのなら、もう少しちがう過ごし方があるかもしれないと感じました。
フットバスに足を浸していただきながら、あたたかいハーブティーをお出しすることもあります。おしゃべりが好きな方には、そのままお話を伺います。今日は静かに過ごしたい、というときは、こちらから話しかけずに、鏡越しに様子だけ見ています。どちらがいい、ということではなく、その日のお客様の呼吸に合わせるのが、うちの店の流れです。
施術中に眠ってしまうお客様も、少なくありません。「気づいたら意識が飛んでいて、恥ずかしい」と笑って起きられるのですが、わたしはむしろ、そのくらい安心して座っていただけたことがうれしいです。家に帰ってからも家事や家族のことで気を張る日が多いなかで、店にいる数時間だけは、なにも背負わずに足元だけ見ていていい。そういう時間になったらいいなと思っています。
染めが終わったあと、足を拭いてスリッパを履き替えていただくときに、多くの方が「体があたたかい」とおっしゃいます。頭のことをしにきたはずなのに、体まで軽くなって帰る。そのちぐはぐさが、実はうちの店で大事にしている感覚に近いのだと思います。頭皮のケアは、頭だけでするものではなくて、体全体のなかで考えていくもの。フットバスを続けているのは、その考えを、言葉ではなく体で受け取っていただきたいからです。