STORY
白髪との付き合い方、店主自身が続けていること
店主のわたし自身も白髪と付き合ってきた一人として、香草カラーの間隔の取り方、頭皮の触り方、暮らしのなかで気にかけていることを、お客様に伝えている内容と重ねて綴った読み物です。
わたし自身の白髪への向き合い方
美容師をしていると、自分の髪のことは後回しになりがちです。人の頭に触れる時間が長くて、自分の分け目や生え際の変化には、思いのほか鈍くなってしまいます。それでも、ある年齢を境に、こめかみのあたりに白いものがちらほらと見えるようになって、鏡の前で立ち止まる回数が増えました。
最初はやっぱり、少しさびしい気持ちがありました。若いころは真っ黒な髪をしていて、それが自分の顔とセットになっていたので、白が交じるだけで別の人のように見える日があります。ただ、お客様の隣に座って何十年もこの話をしてきた身としては、こう思うようになりました。この髪と、これから何十年も付き合っていくのだから、無理に押し込めるより、少しずつ折り合いをつけていくほうが自分に向いている、と。
いま、わたしは香草カラーで根元をなじませながら、白髪の量が増えてきた部分は明るく残す方向で染めています。全体を暗い色でぴたっと塗りつぶすことは、もうしていません。理由は単純で、伸びてきたときの境目が気になって、月に一度以上サロンに通うような暮らしを、自分でも続けられないと思ったからです。
お客様に伝えていることと自分の実践
うちの店に来てくださる方には、白髪染めの間隔を短くしすぎないほうがいいですよ、とお伝えすることがあります。頭皮は、染料を置く時間と回数のぶんだけ、静かに疲れていくところがあるからです。とはいえ、生え際が気になる気持ちも、わたし自身が同じ立場なので、よくわかります。
だから、間隔をあけるためのちょっとした工夫を、自分でも試しています。分け目をときどき変える。伸びてきたところは白を活かす色味に寄せておく。前髪の落ち方で生え際を隠しやすくカットしておく。この3つは、お客様にお話ししながら、わたし自身も鏡の前でやっていることです。
頭皮の触り方も、家で続けています。シャンプーの前に、乾いた頭皮を指の腹で軽く動かす。強くこすらず、皮膚を動かす感覚だけを確かめる。これは香草カラーの前に店で行っているマッサージの、家庭版のような習慣です。爪を立てないこと、力を入れすぎないこと、この2つを守っていれば、一分ほどでも頭がすっとします。
食べ物のことも、お客様との会話でよく話題になります。わたしは特別な食事療法をしているわけではありませんが、体を冷やしすぎないように、白湯を一日のはじまりに飲むようにしています。髪と頭皮は体の一部なので、めぐりがよくなる小さな習慣は、続けているとどこかで返ってくるように感じます。
続けていて感じる変化
香草カラーに切り替えてから、自分の髪で気づいたことがいくつかあります。ひとつは、染めた直後のツンとしたにおいが残らないこと。もうひとつは、生え際のかゆみを感じる日が減ったこと。以前は、染めた翌日にうっすら赤くなっていた耳のうしろが、今はほとんど気にならなくなりました。
もちろん、これはわたしの体に合った、という話にすぎません。人によって、頭皮の反応も髪の癖もちがいますから、同じやり方が全員によいとは言えません。気になる症状が続くときは、皮膚科の先生に相談していただくのが、いちばん確かだと思っています。
変化として大きかったのは、髪の色そのものよりも、鏡の前で感じる気持ちのほうかもしれません。以前は、伸びてきた白い根元を見つけるたびに「早く染めなくちゃ」と、少し追われるような気分になっていました。いまは、白が混じっていても、その日のまとまり方が気に入っていれば、それで十分だと思える日が増えました。
お客様のなかには、わたしより長く白髪と付き合ってこられた方が、たくさんいらっしゃいます。教えていただくことも多くて、あの人がこう言っていた、と別のお客様との会話でご紹介することもあります。白髪との付き合い方に、正解はひとつではないのだと、椅子のうしろに立つたびに教わっている気がします。
わたし自身が続けていることは、特別なことではありません。染めの間隔を焦らないこと、頭皮を家でもすこし気にかけること、体を冷やさないこと。この3つを、自分の生活のなかで細く長く続けているだけです。もし読んでくださっている方の毎日に、ひとつでも重なるところがあれば、うれしく思います。