STORY

1 日 2 名までの理由、時間の使い方について

予約の余白が多い理由と、カウンセリングから染めた後のお茶までの時間をどう過ごしているかを、日々の様子を交えて書いています。小さな美容室のふだんの考え方についての一篇です。

店主 小野澤 祥子

1 日 2 名にしている理由

うちの店では、1 日にお迎えするお客様を 2 名までにしています。予約表を開くと余白がずいぶん多くて、はじめて見た方には驚かれることもあります。どうしてこの人数に落ち着いたのか、少しお話しします。

わたしがこの形にしたのは、以前つとめていたお店で時間に追われながら白髪染めをしていた頃の記憶があるからです。次のお客様が待っているから、ドライヤーを急ぐ。頭皮の乾きが気になっても、じっくり見る時間が取れない。そんな日々でした。

40 代を過ぎたあたりから、髪だけではなく頭皮の変化を感じる方が増えていきます。カラー剤のにおいがきつく感じる、染めた後にかゆみが出る、そんな声を伺うことがあります。そういうお話をゆっくり聞かせていただくには、どうしても時間の余白がいるのです。

カウンセリングと施術の時間配分

おひとりのお客様に、だいたい 3 時間から 3 時間半ほどのお時間をいただきます。最初の 30 分ほどはカウンセリングです。ここが、わたしにとって一番大事な時間だと感じています。

前回からの髪や頭皮の変化、季節による頭皮の乾き、白髪染めのペースをどう考えたいか。そうしたお話を伺いながら、その日の香草カラーの配合を決めていきます。ヘナや藍染のブレンドは、その方の髪の状態と気分に合わせて、毎回少しずつ変わります。ノンジアミンの薬剤に切り替える相談を受けたときも、この時間があるから落ち着いてお話できます。

染めているあいだはお茶をお出しして、雑談をしたり、ときには黙って過ごしていただいたりします。染料が入るのを待つ時間は、施術のあいだの休憩でもあります。仕上げにアーユルヴェーダのオイルを頭皮になじませていくと、少し目を閉じて眠くなる方も多いです。

急がない時間の中でこそ、頭皮の状態が見えてくるように感じます。

お客様一人ひとりに向き合うということ

1 日に何名も担当していた頃と比べて、いまはおひとりの方の髪と頭皮を、ずっと近くで見ています。前回のカラーの残り具合、生え際の細くなり方、耳の後ろの赤み。そういう小さな変化に気づけるようになったのは、この時間の使い方に変えてからでした。

「久しぶりに、頭がすっきり軽くなった気がします」とおっしゃる方がいます。「ここに来ると、話を聞いてもらえるのが楽しみで」と言ってくださる方もいます。染めることだけが目的ではなくて、いていただくあいだの時間ぜんぶで、少しでも楽になっていただけたらと思っています。

もちろん、ご予約が取りづらいというお声もいただきます。ご希望の日にすぐお入れできないことがあって、そこは申し訳なく思っています。それでもこの人数と時間で続けたいと考えているのは、白髪染めや頭皮のお悩みは、その方の暮らしと切り離せないものだと感じているからです。

急がずに、髪と頭皮にゆっくり向き合う時間を、これからも大切にしていきたいと思っています。