AGE

白髪染めをやめる勇気、続けるやすらぎ

白髪染めをやめてグレイヘアに移っていく方と、染め続けていく方の、それぞれの背景と気持ちの動きを、店主の日々の会話からお伝えする読み物です。

店主 小野澤 祥子

やめる選択の背景

「そろそろ、染めるのをやめようかと思っているんです」と切り出されるお客様が、ここ数年、少しずつ増えてきたように感じます。定年を迎えられた方、お子さんの手が離れた方、体調と相談しながら暮らし方を整えていらっしゃる方。理由はそれぞれですが、共通しているのは、少し肩の力が抜けたような、静かな声のことが多いです。

染めるのをやめたい、と口にしてくださるまでには、そこに至るいくつかの気持ちの動きがあります。月に一度、根元が伸びてくるたびに感じるちいさな焦り。染めたあと、頭皮がひりつくような感覚が出てくるようになったこと。鏡の前で、白い髪を見つけるたびに気持ちが下がってしまう自分に、ちょっと疲れてきた、というお話も伺うことがあります。

わたしが大切にしているのは、その方が「染めるのに疲れた」から選ぼうとしているのか、「白いままの自分を見てみたい」から選ぼうとしているのか、少しだけお話を伺うことです。同じように見える選択でも、根っこの気持ちが違うと、伸ばしていく途中の時期の過ごし方が変わってきます。前者の方には頭皮のケアと染料の見直しを一緒に考えることもありますし、後者の方には移行期間の色のなじませ方をご提案することが多いです。

続ける選択の背景

一方で、「わたしは染め続けたいの」とはっきりおっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。仕事の場に立ち続けていらっしゃる方、人と会うことが多い方、ご自分の顔まわりの色みが変わることに、まだ気持ちの準備ができていないという方。その気持ちは、無理に手放すものではないと思っています。

続ける選択の背景には、「自分らしさ」を髪の色に預けていらっしゃる時間の長さがあります。何十年か、鏡の中の自分と付き合ってきた色を、急に変えるのは、思っている以上に大きな出来事です。「まだ、白いままの自分をどう受け止めればいいかわからない」というお声を聞くと、ゆっくりでいいのだと感じます。

染め続けていく中で気になってくるのは、頭皮への負担や、髪のパサつきかもしれません。そのときは、染料そのものを植物由来のものに切り替えたり、染めの頻度を少しだけ落として途中の期間の白髪をヘアアレンジで楽しんだりと、続けながら整えていく余地はまだたくさんあります。染め続けることと、我慢し続けることは、同じではないと思っています。

どちらもあっていいという店主の考え

やめる方と続ける方、どちらのご相談も、うちの店ではおなじ気持ちで伺うようにしています。どちらが素敵だとか、これからの時代はこうだといった話は、鏡の前では脇に置いておきたいのです。ご自分の暮らしと、髪と、頭皮と、今日この一日の気分。そのあたりを、静かに眺めながら決めていければ十分だと感じています。

いちど「やめる」と決めた方が、半年後に「やっぱりまた染めたくなってきた」とお話しくださることもあります。反対に、長く染めてこられた方が、ある日ふっと「今日で最後にしようかな」とおっしゃることもあります。どちらも、そのときのご自分にとって自然な流れなのだと思います。

わたしができるのは、その方が選んだ道の途中で、少しでも髪と頭皮が心地よくいられるように、染料と時間を調整することくらいです。柳井市南町の店で、まだ決めきれない気持ちのままお越しくださっても大丈夫です。話しているうちに、ご自分の中でどちらに寄っているかが見えてくることも、よくありますから。