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白髪と付き合う美容室選び、担当が同じ人であることのよさ

白髪染めを続けていくうえで、担当スタイリストが毎回同じであることの意味を、カルテを残す実務と、少しずつ髪や色を変えていく積み重ねの視点から書いた読み物です。

店主 小野澤 祥子

「今日はどなたが担当してくださるんですか」と、はじめてのお店で聞いたことのある方は多いと思います。予約のたびに違う人があたる、名指しがしにくい、担当が辞めてしまって一から説明する。40 代を過ぎて白髪染めを続けはじめると、この「毎回また一から」がだんだんとこたえるようになる、というお声をよく伺います。

わたし自身、髪の話は一度で完結しないものだと感じています。前回どう染めたか、頭皮がどうだったか、そのときお客様がどんな暮らしをされていたか。積み重なった小さな情報が、次の1回を穏やかにしてくれます。今日は、担当が同じ人であることが、白髪と付き合う時間の中でどんなふうに効いてくるのか、書いてみます。

担当が固定されるメリット

白髪染めは、若い頃のカラーとは少し性格が違うように感じます。頭皮の感じ方、根元の伸びるスピード、白髪の位置、髪のうねりや細さの変化。ここ数年の変化を、その方の言葉と髪の両方から受け取っていないと、次に何を選ぶかの手ざわりが揃いません。

担当が毎回変わるお店では、その日の担当がカルテを読み込んで対応してくださいます。それでも、文字で残せるのはあくまで一部で、「前回、少しヒリつきがあったけれど、話しながらだんだん落ち着いた」といった空気は、実際にその場にいた人にしかわからないと思うのです。

うちの店のお客様には、「あのとき染みたのが心配で、今日は少し様子見ながらでいいですか」と切り出してくださる方がいらっしゃいます。前の1回を一緒に経験していると、こちらもすぐに「ではあの時と同じ配合を一段やさしくしましょうか」と応じられます。この短いやりとりの間に、余計な説明が省かれていくのがありがたいところです。

カルテを残す意味

アオイヘアーでは、来ていただくたびに簡単なカルテを更新しています。使った染料、時間、頭皮の様子、その日のお客様のご希望、次回に向けてのメモ。派手なことは書いていませんが、これが少しずつ厚くなっていくと、髪の履歴書のようなものになります。

たとえば、去年の夏に頭皮が赤くなりやすかった方が、今年の梅雨に「またなんとなくかゆい気がする」とおっしゃる。カルテを開いてみると、同じ時期に似た記録が残っていることがあります。「季節のせいかもしれないですね、では今回は染料を薄めにして、頭皮を守るオイルを先に置きましょうか」と、次の一手を落ち着いて選べます。

もう1つ、カルテは色の設計にも役立ちます。ヘナや藍染は、髪の色に少しずつ重なっていく染まり方をするので、その方の髪の中に「これまで何を入れてきたか」の履歴があります。前回どの配合でどれくらい置いたかがわかっていると、今回どこを足すか、どこを引くかを、感覚だけに頼らずに決められます。

少しずつ変えていける安心

同じ人がずっと担当していると、大きな変化を焦って持ち込まなくてよくなります。「思い切ってグレイヘアに」「一気にショートに」といった選択も、しないわけではありません。ただ、多くの方は、少しずつ移っていくことのほうが暮らしになじむようです。

たとえば、化学染料を長く使ってこられた方が、頭皮の負担を減らしたくてヘナに切り替えたいとおっしゃる。いきなり全部を入れ替えるのではなく、まずは根元だけをやさしいものに変えてみる、次の回で毛先の一部にヘナを重ねてみる、というふうに、二、3回かけてゆっくり移していきます。担当が同じだと、この「途中の1回」の判断が続けやすくなります。

グレイヘアへの移行も同じです。全部染めるのをやめるかどうかを、その日の気分ではなく、半年、一年のスパンで一緒に眺めながら決めていく。染めながら白い部分をだんだんと生かしていく段階がありますし、途中でやっぱり染めたい気持ちに戻ることもあります。どちらもその方の時間の流れの中で選べたほうが、無理がないと感じます。

うちの店ではマンツーマンでお迎えしているので、必然的に同じわたしがずっとお隣にいることになります。そのことを、わたしは重い責任というよりも、白髪と付き合う時間を一緒に歩かせていただく、静かな仕事だと思っています。「次のとき、またあのお話の続きから」で始められる関係を、これからも大事にしていきたいです。