TECHNIQUE

天然染料と化学染料、それぞれの向き不向き

化学染料と天然染料それぞれの得意なこと苦手なこと、髪や頭皮の状態・染めたい色みで使い分ける考えかたを、店頭でのやりとりを交えて書いています。

店主 小野澤 祥子

「天然だから安心、化学だから怖い」と、そんなふうに単純に線を引けたら楽なのですが、実際に髪を触っていると、そう割り切れる話ではないと感じます。どちらにも得意な仕事があって、苦手な場面もあります。わたしはお客様の髪と頭皮の状態、染めたい色みを聞きながら、その日その日で薬剤を選び分けています。

化学染料の得意なこと

化学染料、いわゆるアルカリカラーやジアミン系のカラー剤は、色みの自由度がとても高い薬剤です。明るくしたい、赤みを消して灰色に寄せたい、根元だけ暗くして全体はやわらかく、といった細かい調整が効きます。白髪の量が多くても、一度でしっかり染まってくれるのは、やはり強みだと思います。

短い時間で仕上がるのも助かる場面があります。お仕事の合間に来られる方や、次の予定が控えている方には、この速さがありがたい。

一方で、繰り返すうちに髪の内側がスカスカになりやすかったり、頭皮に薬剤が触れるとしみたり赤くなる方がいらっしゃいます。ジアミンにアレルギーが出てしまうと、パッチテストで反応が出た時点で使えなくなります。ここが化学染料の苦手な部分です。「昔は平気だったのに、急に染みるようになった」と伺うことがあります。体調や年齢で変わるものなのだと、話しながら感じます。

天然染料の得意なこと

ヘナや藍、木藍といった天然染料は、髪を染めるというより、髪の表面に色を重ねていく染めかたです。色素が髪の内側を壊さないので、続けるほどに髪にコシが戻ってきたと感じる方が多いです。頭皮にも比較的やさしく、しみる感覚が出にくいので、皮膚科でジアミンを避けるように言われた方にも選んでいただけます。

香草カラーのように、ヘナに数種類のハーブを合わせるやりかただと、頭皮のべたつきやにおいが落ち着いてきたと伺うこともあります。アーユルヴェーダの考えかたが下敷きにあるので、髪の色だけでなく、頭のめぐりごと整えていく時間になります。

ただ、天然染料は色みの自由度は高くありません。赤みのあるオレンジから、藍を重ねて濃い茶色に落ち着かせる、というのが基本の色域です。ぱっと明るい色や、灰色っぽい寒色は出せません。染まるまでの時間も、化学染料の倍近くかかります。ゆっくり座っていられる日でないと、少し疲れてしまうかもしれません。

使い分けの考えかた

わたしがお客様と一緒に決めていくときに、頭に置いていることを書いておきます。

  • 頭皮がしみる、かゆくなる、体調によって反応が変わる。こうしたサインがある方は、天然染料を軸にして考えます
  • 明るさや色みを細かく合わせたい、行事の前で仕上がりの正解が決まっている。こういう日は化学染料の力を借ります

どちらか一方に絞る必要もないと思っています。ふだんは香草カラーで頭皮を休ませて、大切な集まりの前だけ化学染料で色を整える。そんな行き来をされている方もいます。髪も頭皮も、季節や年齢で少しずつ変わっていきますから、去年のやりかたが今年も合うとは限りません。

うちの店では、はじめての方には髪と頭皮を見せていただいてから、その日どちらで染めるかをご相談します。「天然のほうがいい気がするけれど、明るさは残したい」と迷いを話してくださる方も多いです。迷いのまま座っていただいて構いません。染料の話をしながら、いまの髪にとって無理のない一歩を、一緒に選んでいけたらと思っています。

気になる症状がある方は、皮膚科でのご相談も並行してみてください。染料の選択は、そのうえで落ち着いて決められることのほうが多いです。