TECHNIQUE
香草カラーとヘナの違い、成分・仕上がり・持ちを店主が比較します
香草カラーとヘナはどちらも植物系の白髪染めですが、主成分や染まる仕組み、色味と質感、色持ち、施術時間まで性格が異なります。両者の違いと使い分け、藍染を重ねるツータッチの考えかたを店主目線で書きます。
「香草カラーとヘナって、結局どう違うんですか」。この質問を、うちの店でもよく伺います。どちらも植物由来のイメージがあって、ノンジアミンという言葉が並ぶこともあり、雑誌やネットの記事を読むほど、かえって境目が曖昧になっていくのだと思います。
わたし自身、2つを併用しながらお客様と付き合ってきて、性格の違う染料だとつくづく感じています。仕上がりの雰囲気も、色持ちのしかたも、通う頻度も、じつはそれぞれちがう。今日はその輪郭を、なるべく普段の言葉で並べてみます。
香草カラーとヘナ、それぞれどんな染料か
香草カラーは、少量のジアミン系染料に、植物のパウダーや薬草エキスを合わせて練り上げるタイプの白髪染めです。一般的なアルカリカラー(いわゆるおしゃれ染めや白髪染め)の刺激を薬草でやわらげ、そのぶん髪や頭皮の負担を軽くしようという考えかたで作られています。
ヘナは、インドや北アフリカで昔から使われてきたミソハギ科の植物の葉を乾燥させ、粉にしたものです。粉をお湯で溶いて、ペースト状にして髪に塗る。ローソンという色素成分が髪のたんぱく質に結びついて、オレンジ〜赤茶に染まっていきます。化学染料は基本的に入りません(純度の高い、いわゆる「ピュアヘナ」の場合)。
同じ「植物」と言っても、香草カラーは化学染料をベースに植物を足していく発想、ヘナは植物そのもので染めていく発想。出発点が違うので、そこから枝分かれする性質もかなり違ってきます。
主成分と染まる仕組みの違い
香草カラーの主役は、ごく少量に抑えられたジアミン系の色素と、酸化を助けるアルカリ剤です。ここに、植物のパウダーや薬草のエキスがブレンドされて、頭皮のヒリつきや髪のパサつきを抑える方向に働きます。染まり方としては一般的な白髪染めと似ていて、キューティクルを少しゆるめて、内部で色素を反応させて発色させます。
だから、しっかり黒っぽい色や、深いブラウンにも入りやすい。白髪の量が多い方でも、根元がぼやけずに色が乗ります。ジアミンが少量とはいえ入るので、過去にアレルギーが出たことのある方はパッチテストのご相談から始めることが多いです。
ヘナは仕組みがまったく違います。ローソンという色素が、髪のケラチン(たんぱく質)と結びついて発色するので、キューティクルをこじ開ける必要がありません。髪の外側に色素をまとわせるようなイメージ、と言うとわかりやすいかもしれません。だから染めるたびに髪はコシが出やすく、頭皮への刺激も一般的なカラー剤に比べると穏やかです。
ただ、色を作る力はローソン一色ぶんしかないので、単体では基本オレンジ〜赤茶に落ち着きます。「黒くしたい」「深いブラウンにしたい」ときは、ヘナだけでは難しく、藍染(インディゴ)を組み合わせるツータッチという方法をとります。この考えかたは、記事の後半でもう一度触れます。
仕上がりの色味と質感の傾向
香草カラーの仕上がりは、いわゆる「白髪染めをした」馴染みのある色に近いです。ブラウン系、ダーク系、少し赤みを抑えたアッシュ寄りまで、レシピを組み合わせることでかなり幅を持たせられます。「同窓会があるから、いつもより落ち着いた色で」といったご希望にも合わせやすい。
質感は、しっとりまとまる感じ。植物のパウダーが入っているぶん、一般的なアルカリカラーよりは仕上がりが柔らかい印象で、施術後に「髪が軽くなった」と感じてくださる方もいます。ただし、根っこにジアミンがある染料なので、艶はあってもツンとした軽さではなく、少し重心のある艶です。
ヘナはまったく別の顔をしています。単体で染めると、光に透けたときに赤みが揺れる、独特の色になります。全体がオレンジに寄る方もいれば、もともとの髪色と混ざってワインレッドのような深みが出る方もいる。同じレシピでも、髪質と白髪量で表情が変わるところが、ヘナのおもしろさです。
質感は、乾いたあとにキシむと感じる方が最初はいらっしゃいます。何度か重ねていくうちに、髪一本一本にコシが出て、根元がふわっと立ち上がる方向に変わっていく。「猫っ毛でぺたんとしていたのが、扱いやすくなった」というお声も少なくないです。
色持ちの実際(一般的なカラー剤との違い含む)
一般的な白髪染め(アルカリカラー)は、染めた直後がいちばん濃く、そこから 3〜4 週間かけて少しずつ抜けていく、という色持ちの曲線です。うちに通ってくださる方の中には、根元だけを 4〜5 週間ごとにリタッチする、というリズムの方が多いです。
香草カラーもだいたい同じくらいの色持ちだと感じています。ジアミンの量を減らしているぶん、退色がやや早く感じる方もいらっしゃいますが、大きく変わるわけではありません。染めたての色を保ちたい方は、少し早めのペースで根元だけを整えていく、というやり方が現実的です。
ヘナは、色持ちの感覚がかなり違います。ローソンが髪の内側までじわじわ入っていくので、「色が抜ける」というより「表面のオレンジ味が落ち着いて、髪と一体化していく」という言い方のほうが近いです。染めた直後は主張のある赤茶が、2〜3 週間かけて肌馴染みの良いトーンに沈んでいく感じ。
ただし、ヘナだけで染めている方は、根元の白髪が伸びてきたときに「オレンジ→白」のコントラストが目立ちます。ここが気になる方には、根元だけこまめに染めるか、藍染を重ねてトーンを落ち着けるか、というご相談をすることが多いです。
施術時間と通う頻度の比較
香草カラーの施術は、シャンプーや仕上げのブローまで含めて、だいたい 2 時間前後で収まることが多いです。一般的な白髪染めと似た感覚ですね。放置時間もそこまで長くないので、「午後にちょっと出かける前に染めたい」というご要望にも合わせやすい。
ヘナはどうしても、そこそこの時間がかかります。粉をお湯で溶いてしばらく寝かせ、髪全体に塗ってから 30 分〜1 時間ほど置く。ツータッチで藍染まで重ねると、さらに時間がかかります。うちの店では、はじめてヘナを試される方には 3 時間ちょっとを見ておいてください、とお伝えしています。
- 香草カラー…2 時間前後、4〜5 週間ごとの根元リタッチが中心
- ヘナ(単体・ツータッチ含む)…3 時間前後、4〜6 週間ごとの根元染めが中心
通う頻度そのものはそれほど変わらないのですが、1 回に確保していただく時間が違うので、生活のリズムと相談しながらどちらを選ぶかを決めていくことが多いです。「今日はしっかり座って本を読みたい気分だからヘナで」とおっしゃる方もいらっしゃって、そういう時間の使い方も含めてヘナを楽しんでくださっている印象です。
向いている方の傾向(両者の使い分け)
香草カラーが合いやすいのは、しっかりした色で白髪を隠したい方、これまでのカラー剤に近い仕上がりを保ちたい方、施術時間を短めにおさえたい方。「白髪はきっちり染めたいけれど、頭皮のヒリつきは減らしたい」という方には、まずは香草カラーからご案内することが多いです。
いっぽうでヘナが向いていると感じるのは、次のようなお声のときです。
- 頭皮がしみるのがつらい、ジアミンを一度きちんと避けてみたい
- 髪が細くなってきて、根元にコシがほしい
- カラーの色そのものを楽しみたい、赤みや深みのある色が好き
- 施術時間はかかっても、頭皮ケアの時間として楽しみたい
もちろん、両者は「敵」ではありません。同じ方が季節ごとに使い分けたり、「夏はヘナで頭皮を落ち着け、行事の前だけ香草カラーで色をしっかり入れる」という付き合い方をされる方もいます。わたしが伺いながらお決めするときは、髪の状態と、その方が今いちばん気になっていることをまず聞かせてもらいます。
たとえば「頭皮が最近チクチクする」というお声には、まずヘナで様子を見ながら、ジアミンをいったん休ませる期間を作りましょうか、とご提案する。反対に「来週の集まりまでに、白髪を目立たなくしたい」というときは、香草カラーで手早く整えるほうが現実的なこともあります。医療的な断定ではないのですが、頭皮の状態が明らかに荒れているときは、皮膚科でのご相談も並行していただくよう伝えるようにしています。
藍染(ツータッチ)を組み合わせる場合の考えかた
ヘナのオレンジをもう少し落ち着けたい、暗めのブラウンや黒に近いトーンで白髪をなじませたい。そういうときに登場するのが、藍染(インディゴ)です。ヘナで一度染めたあと、続けて藍染のペーストを重ねる。これがツータッチという方法です。
仕組みとしては、ヘナで髪にオレンジの層を作ったところに、藍の青みを重ねることで、光の三原色ではないですが、結果としてブラウン〜黒っぽいトーンに落とし込む、というイメージです。植物同士の重ね塗りなので、化学染料で一気に黒く染めるのとは違って、時間とともに少しずつ色が育っていく感じがあります。
ただ、藍染は単体で使うと、髪の状態や日光によって緑がかって見えることもあります。だからうちの店では、必ずヘナのオレンジをベースにしてから藍染を重ねる、という順番を守っています。染めた直後は少し暗めに見えて、2〜3 日かけて落ち着くところに着地する、というのがツータッチのおもしろいところです。
- ヘナ単体…オレンジ〜赤茶、赤みのある表情
- ヘナ+藍染(ツータッチ)…ブラウン〜黒に近いトーン、白髪もなじみやすい
- 香草カラー…深いブラウン〜ダーク系まで、レシピで幅を持たせられる
「じゃあ、私にはどれが合うのか」というお話は、髪をさわらせていただき、頭皮を見て、これまでの染めかたを伺ってから、その日一緒に決めていきます。予約の時点で無理に決めていただかなくて大丈夫です。カウンセリングの席で、香草カラーもヘナもツータッチも、それぞれのメリットとご不便な点を並べてご説明します。
同じ「白髪を染める」でも、こんなに考え方の違う染料が並んでいるのは、じつはありがたいことだと思っています。ご自分の髪と頭皮の今の状態、そしてこれからの過ごしかたに合わせて、ゆっくり選んでいただければ嬉しいです。気になることがあれば、電話でもメッセージでも、お気軽に聞かせてください。