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白髪をぼかす、明るくする、隠す、それぞれの違い

白髪との付き合いかたには「ぼかす」「明るく染めて馴染ませる」「深く染めて隠す」の三つの方向があります。それぞれの仕組みと似合う場面、香草カラーやヘナでの使い分けを、店主の目線で書きます。

店主 小野澤 祥子

「白髪、そろそろどうにかしたいんだけど、真っ黒に染めるのはもう違う気がして」。うちの店で伺うご相談で、ここ数年いちばん増えているのがこの言葉です。若いころの白髪染めのイメージのまま椅子に座ると、鏡を見て「思ったより暗い」と感じてしまう。そこで初めて、白髪との付き合いかたにはいくつか方向があるのだと気づかれる方が多いように思います。

わたしの中で整理していくと、白髪へのアプローチは大きく3つに分かれます。「ぼかす」「明るく染めて馴染ませる」「深く染めて隠す」。似た言葉に見えて、狙っている仕上がりも髪への向き合いかたも、ずいぶん違います。今日はその輪郭を、なるべく普段の言葉で並べてみます。

「ぼかす」というのはどういうことか

ぼかす、というのは、白髪を隅々まで染めきってしまうのではなく、周りの髪と白髪の境目をゆるめてあげる方向です。白髪の一本一本にうっすら色を乗せたり、逆にまわりの黒髪を少し明るくしたりして、コントラストそのものを下げていく。

だから、鏡に近づいて見ると、白いままの毛と染まっている毛が混ざっているのがわかります。でも一歩引くと、髪全体がやわらかいベージュや明るいブラウンにまとまって見える。「染めました」という主張がないので、伸びてきたときの根元の白い線も、ぐっと目立ちにくくなります。

40 代の後半から 50 代にかけて、「毎月きちんと染めるのがしんどくなってきた」というお声を伺うことが増えます。そういう方に、まず選択肢としてお話しするのが、このぼかす方向です。次に染めるまでの間、鏡を見るたびに気が重くならないというのは、思っているより暮らしを楽にしてくれます。

明るく染めて自然に馴染ませる方法

ぼかす方向と地続きなのが、髪全体を少し明るいトーンにして、白髪と黒髪の境目をゆるめていくやりかたです。ハイライトを細く入れる、あるいは全体を数トーン明るいブラウンに染めて、白髪を「明るい部分」の一部として溶け込ませていく。

このやりかたが向いているのは、もともと髪が細めで、しっかりした暗い色を乗せると重く見えてしまう方。あるいは、白髪の量がまだ全体の三割前後で、黒髪もまだ多く残っているような時期。明るく振ることで、顔まわりが軽くなって、印象そのものが少し若返ったように感じてくださる方も多いように感じます。

一方で、明るく染めるということは、髪の内側から色素を抜く作業も含みます。カラー剤の中には、白髪だけを染めるのではなく、まわりの黒髪を明るくする力を持ったものもあり、そのぶん髪への負担は増えます。「もともとぱさつきが気になっていて」という方には、施術の間隔を空けたり、ハイライトを部分的に留めたりと、ご相談しながら決めていくことが多いです。

深く染めて隠す方法

反対に、白髪をしっかり隠したい、鏡に近づいたときも「白いもの」を見たくない、というご希望もあります。同窓会や法事、お仕事の場面など、その日は暗めのトーンで整えたい理由がはっきりしている、というお声もよく伺います。

そのときに選ぶのが、深いブラウンやダーク系でしっかり染めきる方向です。白髪の一本一本にきちんと色が入って、光が当たっても白いラインが浮かないところまで持っていく。仕上がりは重心のある艶で、髪全体に落ち着きが出ます。

ただ、この方向を続けるときに気をつけたいのが、根元の伸びかたです。深く染めた分、白髪が伸びてきたときのコントラストははっきり出ます。4 週間から 5 週間ごとに根元だけを整えるリズムが必要になることが多く、その頻度が生活に無理なくはまるかどうかを、事前に伺うようにしています。頭皮のヒリつきが気になる方には、香草カラーで刺激をやわらげながら、というご提案をすることもあります。

ハーブ染料での使い分け

うちの店では、香草カラーとヘナ、そして藍染をお客様と相談しながら組み合わせています。この3つも、それぞれ得意な方向がちがいます。

香草カラーは、レシピで幅を持たせやすいので、深く染めて隠す方向にも、少し明るめに寄せて馴染ませる方向にも合わせやすい染料です。「今日はきっちり」「今日はもう少し軽く」と、その日の気分やご予定に合わせて調整できるのは、香草カラーのいいところだと感じています。

ヘナは、単体だと赤みのあるオレンジに染まるので、白髪をぼかす方向と相性がよいです。黒髪と混ざったときに独特のニュアンスが出て、光の角度で表情が変わる。年月をかけて重ねていくと、髪一本一本にコシが出て、根元がふわっと立ち上がるようになる方もいらっしゃいます。

隠す方向を選びたい方には、ヘナに藍染を重ねるツータッチをご案内することが多いです。ヘナのオレンジをベースに、藍の青みを重ねて、ブラウンから黒に近いトーンに着地させる。植物同士の重ね塗りなので、時間とともに少しずつ色が育っていく感じがあります。

どの方向が今のご自分に合うかは、鏡の前に一緒に座って、髪をさわらせていただきながらお話しするのがいちばんです。予約の時点で決めきらなくて大丈夫です。気になる点があれば、電話でもメッセージでも、お気軽に聞かせてください。