AGE
60 代の白髪が増えてきた時期、色の選び方
60 代になり白髪の割合が半分を超えてきた時期に、香草カラーやヘナ、藍染をどう組み合わせて色を決めていくかを、頭皮のゆらぎと髪の質感変化の両面からお話しした読み物です。
白髪量の変化と染料の選び方
60 代のお客様とお話ししていると、「気づいたら、黒い髪より白い髪のほうが多くなっていた」という声をよく伺います。50 代の頃までは、生え際と分け目さえ隠れれば全体は落ち着いて見えた方が、60 代に入ったあたりで急に印象が変わったように感じる、と鏡の前で少し戸惑っていらっしゃることがあります。
白髪の割合が半分を超えてくると、同じ染料を同じ時間置いても、以前と仕上がりが違ってきます。黒髪の中に少しの白髪が混ざっていた頃は、白髪だけがふんわり明るく染まって、全体としてはやわらかい印象にまとまっていました。ところが白髪の面積が広くなると、染料が乗った部分がそのまま「色」として見えてくるので、少しの濃さの違いが、大きな印象の違いになってきます。
わたしがお客様と一緒に色を考えるときに気にしているのは、髪の色そのものよりも、その色になったときの顔まわりの印象です。白髪が増えてきた時期は、髪だけを見て決めてしまうと、実際に染め上がってから「思っていたのと違う」となりやすいところがあります。お顔の血色、眉やまつ毛の濃さ、ふだん着ていらっしゃる服の色みまで、なんとなく頭に浮かべながらお話を伺うようにしています。
染料も、黒髪が多かった頃と同じものを使い続ける必要はないと感じています。60 代になって頭皮がゆらぎやすくなってきた方は、香草カラーやヘナといった植物由来のものへ切り替えると、染めたあとの数日間の落ち着きかたが変わってくることが多いです。頭皮がしみやすくなってきた、と感じ始めた方は、一度ノンジアミンの染料で染めてみて、その後の頭皮の状態を確かめてみるのもいいと思います。
明るめに染めるか、深く染めるかの考え方
白髪が増えてきた時期は、「明るめに染めて白髪をなじませていく」方向と、「深めに染めて黒に近い印象を保つ」方向の、大きく2つの考え方が出てきます。どちらが正解ということはなくて、ご本人の好みと、髪と頭皮の状態、そしてこれからどう伸ばしていきたいかによって変わってきます。
明るめに寄せていく方向は、根元が伸びてきたときの「白い線」が目立ちにくくなるのが利点です。全体を少し明るく整えておくと、白髪が伸びてきても地の色との差が緩やかで、次のご来店までの気持ちの負担が軽くなる方が多いように感じます。ふんわりした印象になりやすいので、雰囲気を軽やかにしたいと考えていらっしゃる方には合いやすいです。
深めに染める方向は、染め上がりの落ち着きと、髪一本一本のツヤ感が出やすいところが魅力です。60 代になっても髪をしっかり見せたい、和装や落ち着いた色の服が好きだ、という方には、深い色のほうがしっくりくることが多い印象です。ただし、根元が伸びてきたときのコントラストは強めに出るので、月に一度前後の染め直しを前提に考えていただくことになります。
ご自分がどちらに寄せたいか迷われるときは、いまの染め上がりに対して「もう少し軽くしたい」のか「もう少し落ち着かせたい」のか、その一言だけを持って相談にいらしていただければ十分です。うちの店でも、そこから逆算して染料と時間を決めていきます。
藍染で赤みを抑えたい方への提案
白髪が増えてきた時期に、意外と多いご相談が「染めたあと、髪の赤みが気になる」というものです。ヘナだけで染めた場合、時間が経つと少しずつオレンジ寄りの色に見えてくることがあります。日本人の髪はもともと赤みを持っている方が多く、その赤みとヘナの色が重なって、思っていたより暖かい色に見えることがあるのです。
そのときにわたしがおすすめしているのが、ヘナと藍染を組み合わせる方法です。藍染はインドの伝統的な植物染料で、ヘナのオレンジみに青みを重ねることで、落ち着いたブラウンや、黒に近い深い色まで表現できます。赤みを抑えたい方や、髪色を暗めに保ちたい方に向いていると感じます。
藍染を使うときは、染めたあとの数日間、少しずつ色が深くなっていく変化を楽しんでいただきたいところです。染め立てのその日と、三日後、一週間後で色みが違って見えるので、鏡を見るのが少しだけ楽しくなる、と話してくださる方もいらっしゃいます。
ただ、藍染は誰にでも同じように向くものではなくて、髪の状態や過去の染歴によって、色の出かたが変わってきます。ヘナだけで長く染めてきた方の髪と、白髪染めを繰り返してきた方の髪では、藍が乗る深さが違うのです。ご自分の髪でどんな色になりそうか気になる方は、初めは短い時間で試しに染めてみて、その日の仕上がりを見て次のときに調整していく、というやり方でも大丈夫です。
60 代は、白髪との付き合いかたが少しずつ落ち着いてくる時期でもあります。焦って正解を出そうとせずに、季節ごとに色を少し変えてみたり、頭皮の調子と相談しながら染料を選び直したりしていければ十分だと思います。柳井市南町の青いドアの店で、ご自分の髪の話をゆっくり聞かせていただけたら嬉しいです。